アメリカのプロ野球では、世界最高峰のメジャーリーグベースボール(MLB )の他に、その下部組織として「マイナーリーグベースボール(MiLB)」が存在します。
MiLBは、MLB選手を目指す若き才能や、故障からの復帰を目指すベテラン選手たちが日々しのぎを削る、まさに「MLBへの登竜門」です。
この記事では、MiLBの基本的な仕組みから、役割、待遇などを徹底解説します。
マイナーリーグ(MiLB)とは?

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マイナーリーグ(MiLB)は、MLBの各球団が所有・提携する多数の独立したプロ野球チームの総称です。
MLBの30球団はそれぞれ、複数の傘下マイナーリーグチームを保有しており、それぞれのチームは「ルーキーリーグ」から「AAA(トリプルA)級」までの5階級のいずれかに割り振られています。
昨今は改善の動きが進められているものの、待遇が過酷であることで知られており、所属選手はシーズンオフにアルバイトで生計を立てていることも。
2019年時点では、最上位クラスのAAA級所属選手ですら、年俸は11,044ドル(約163万円)でした。
なお、2023年には給与面の待遇はある程度改善されており、AAA級は3倍近くまで引き上げられています。
※各クラスの現時点における最低保証年俸は後述。
待遇面における過酷さは、金銭的問題だけではありません。
基本的に食事は自費、もしくは最低限の食事であることが多いとのこと。また、本拠地と敵地間の移動は、MLBであればチャーター機移動である一方、MiLBはバス移動が基本となります。
マイナーリーグの目的
マイナーリーグが設立された目的としては、以下の3つが挙げられます。
MLB選手の育成
マイナーリーグは、若手選手が経験を積み、技術を向上させる場として主に利用されています。
未来のMLB選手は、MiLBを這い上がってきた選手から生まれることがほとんどです。
故障選手の調整
マイナーリーグは、復帰を目指すMLB選手のリハビリ登板や調整の場としても用いられています。
基本的に、マイナーの試合への出場は、調整の最終段階。
故障明けの選手がマイナーへ出場した場合、「近々MLBに戻ってくる」と考えられます。
MLBロースターの補充
MLBの試合において、何らかの理由で選手が必要になった場合、 MiLBから選手が昇格することがあります。
マイナー、特にAAA級(後述)の一部選手は、メジャーリーグの”控え”としての側面も持つのです。
実験的新ルールの導入
MLB導入前の新ルールは、まずマイナーで導入されます。
例えば「ピッチクロック」は、2015年にAA級、AAA級で初導入され、2023年にMLBに導入されました。
いわゆる「ロボット審判」も、マイナーでは既に導入されています。
マイナーリーグの階層構造
マイナーリーグは、AAA級を頂点とするピラミッド型の階層構造を持っています。
各レベルは、選手の経験や能力に応じて分けられており、下位レベルほど育成の色が濃く、上位レベルほどMLBに近い実力を持つ選手が集まります。
主なリーグ構成は以下の通りです。
ルーキーリーグ
マイナーリーグの中で最も下位の、主にプロキャリアをスタートさせる場所です。
このリーグには、各MLB球団の直営チームが所属しています。
【最低保証年俸】19,800ドル(約293万円)
ドミニカン・サマーリーグ(DSL)
「アカデミー」とも呼称され、ドミニカ共和国や周辺国出身の有望株(17〜22歳)が所属しています。
ラテンアメリカ地域で開催される唯一のルーキー級リーグ。
ここで勝ち抜いた選手が、アメリカ本国のルーキー級リーグ、ACL、FCLへと進みます。
アリゾナ・コンプレックスリーグ(ACL)
MLB各球団がスプリングトレーニングを行っている球場を本拠地とする、ルーキー級のリーグです。
例えばドジャースは、アリゾナ州グレンデールに「アリゾナ・コンプレックスリーグ・ドジャース」を保有しています。
基本的に、所属選手は各MLB球団に入団した1年目の選手です。
フロリダ・コンプレックスリーグ(FCL)
ACLと同じく、MLB各球団がスプリングトレーニングを行っている球場を本拠地とする、ルーキー級のリーグです。
例えばヤンキースは、フロリダ州タンパに「フロリダ・コンプレックスリーグ・ヤンキース」を保有しています。
基本的に、所属選手は各MLB球団に入団した1年目の選手です。
A /シングルA
ルーキーリーグの次のステップが、A級です。ここで選手たちは、より多くの経験を積みます。
シーズンを通しての試合数も増えるため、メジャーデビューにあたり、体力と精神面の両方が試される段階です。
【最低保証年俸】26,200ドル(約387万円)
A+ /ハイA
A+級はシングルAの上位クラスであり、ここでは一段とレベルが上がります。
身体能力だけでなく、より高度な野球IQや状況判断能力が求められる、将来のプロスペクト達が力をつけるための重要な段階です。
【最低保証年俸】27,300ドル(約404万円)
AA /ダブルA
AA級は、A+級のさらに上に位置する、マイナーの中でもかなりレベルが高いリーグです。
多くのプロスペクトがメジャー昇格を目前に控えてプレーしており、技術レベルが高い他、経験豊富な選手も多く混じります。
【最低保証年俸】30,250ドル(約447万円)
AAA /トリプルA
AAA級は、メジャーリーグのすぐ下に位置する、マイナーの最上位リーグです。
メジャーの開幕ロースターに入らなかった選手、昇格したもののマイナー降格となった選手、そして昇格を目前に控えるトッププロスペクトがプレーします。
常にメジャーからのコールアップの可能性があるリーグです。
【最低保証年俸】35,800ドル(約529万円)
本記事のまとめ
以上、本記事ではマイナーリーグ(MiLB)について詳しくご紹介しました。
MiLBの試合観戦には、以下のようなMLBとは異なる独自の魅力があります。
- 将来のスター選手の発見:MLBで活躍する前の若き才能を間近で見ることができます。多くのMLBスター選手がMiLBで基礎を築きました。
- 手頃な価格:MLBに比べてチケットや飲食物の価格が手頃。リハビリ中のスター選手を、格安で見られるかも?
- 地域密着型:各地のコミュニティに深く根ざした運営をしており、ファンとの距離が近く、アットホームな雰囲気の中で野球を楽しめます。
メジャーリーグの華やかな舞台の裏側で、選手たちが夢を追いかけ、成長していく場所、マイナーリーグ。
アメリカの野球文化の重要な一部として、一度は訪れてみる価値のある場所と言えるでしょう。