MLB中継を見ていると、「防御率」や「WHIP」など、耳慣れない言葉を耳にする機会はありませんか。
「数字のスポーツ」とも言われる野球において、これらの数字、すなわち「指標」を理解することで、投手がいかにすごいピッチングをしているのか、そしてチームの勝利にどう貢献しているのかが、驚くほどクリアに見えてくるんです。
本記事では、MLBの試合観戦を行う上で重要となる投手の「指標」をわかりやすく解説します。
今日の試合から、これらの数字に注目することで、あなたのMLB観戦が100倍面白くなること間違いなし!
これで投手の「すごさ」がわかる!【基本の指標】
ここでは、投手能力を測る以下の6つの指標について解説していきます。
- 防御率(ERA: Earned Run Average)
- WHIP(Walks plus Hits per Inning Pitched)
- 奪三振率(K/9: Strikeouts per 9 Innings)
- 与四球率(BB/9: Walks per 9 Innings)
- QS(クオリティスタート: Quality Start)
- FIP(Fielding Independent Pitching)
- WAR(Wins Above Replacement)
防御率(ERA: Earned Run Average)
防御率(ERA)とは、「投手が9イニング投げたら、平均で何点取られるか」を表す指標です。
防御率3.00の選手が完投(9イニング投げきり)した場合の失点は、平均して3点。防御率9.00の選手が完投した場合の失点は、平均して9点……といった具合。
”数値が低い選手ほど優秀”とだけ理解していれば、間違いはありません。
なお、防御率の算出は、エラーによる失点などを除いた「自責点」のみが用いられており、投手の失点抑制能力をある程度正確に表した指標となっています。
以下に、ざっくりとした防御率の読み解き方を数値別でまとめました。
いずれも”規定投球回に達している投手”を対象とした「読み解き方」です。
防御率 2.50以下
サイ・ヤング賞レベルのエース中のエース。
例えば2024年のサイ・ヤング賞投手であるタリク・スクバルは、シーズン防御率2.39を記録。2025年シーズンにおいても、本記事執筆時点で防御率2.19と、これまたサイ・ヤング級の活躍を続けています。
また、ドジャース一筋のベテラン投手、クレイトン・カーショウは、2013年に1.83、2014年に1.77と、2年連続で1点台の防御率を叩き出しました。※当然ながら、両年ともサイ・ヤング賞受賞。
ここまで読んだあなたであれば、カーショウがどれほどの大投手であるか、お分かりいただけたのではないでしょうか。
防御率 2.51〜3.50
球界を代表する一流投手。各チームの先発ローテーションの柱です。
各チームのエース級の投手であれば、3.00以下の防御率は欲しいところ。
例として、2024年シーズンの山本由伸は、メジャー初年度ながら18先発で防御率3.00を記録しました。
そして2025年の本記事執筆時点でも2.55と、安定した成績で日米のファンの期待に応え続けています。
なお、ドジャースの他の面々としては、11先発のクレイトン・カーショウが3.27、9先発のタイラー・グラスノーが2.75をそれぞれ記録しています。
防御率 3.51〜4.50
先発ローテーションの一員として十分貢献していると言える数値です。
一方で、ポストシーズンを争うチームの投手となると、いささか不安が残る数字。
2025年のドジャースでは、エメ・シーハンが4登板(3先発)で4.41、ジャスティン・ロブレスキが8登板(2先発)で4.50を記録しています。
※いずれも先発登板数が少ないため、2025年シーズン終了後は評価が大きく変わっているかも……?
防御率 4.51以上
投手としては改善が必要な状況であり、”試合を作る役割”は果たせていないと言える数値です。
ドジャースでは、18登板(17先発)のダスティン・メイが防御率4.73と振るわない成績であり、トレードやDFA(事実上の戦力外通告)が噂されています。
また、プロスペクト(若手有望株)ランキング1位として期待されていた佐々木郎希は、8先発で防御率4.72。故障を乗り越え、再起を図ります。
防御率は万能か
投手能力を表す万能な数値であるように思われがちな防御率ですが、そうではないケースも。
例えば、先発投手と比べて走者を残した状態で交代する場面が多い救援(リリーフ)投手については、防御率のみでは実力が測りづらい場合があります。
これは、塁上に残った走者が生還した場合、その自責点はその走者を出した投手に付与されるためです。
WHIP(Walks plus Hits per Inning Pitched)
WHIPとは、「1イニングあたり、何人の走者を許したか」を表す指標です。
打者によるヒットと、投手による四球(フォアボール)で出した走者の数を、投球回で割って算出します。
防御率が「失点」に焦点を当てるのに対し、WHIPは「走者を出さない能力」を示すため、投手の安定性や危なげなさを見るのに適しています。
以下に、ざっくりとしたWHIPの読み解き方を数値別でまとめました。
WHIP 1.00以下
打者の進塁を阻む素晴らしい投手。
例えば、ドジャースに所属するリリーフ左腕のアレックス・ベシアは、48登板でWHIP 0.94と、本記事執筆時点で素晴らしいシーズンを送っています。
また、現状はオープナーとして6先発に留まっている大谷翔平も、現時点でWHIP 1.00と素晴らしい走り出しです。

WHIP 1.01〜1.10
エース級の投手。打者を抑え込んでいると言えます。
”ドジャースのエース”としてシーズン序盤から奮起している山本由伸(WHIP 1.05)や、復帰以来尻上がりに調子を上げているタイラー・グラスノー(WHIP 1.03)は、この位置です。

WHIP 1.11〜1.25
一流の投手として、安定したピッチングを見せていると言えます。
ドジャースでは、先発のクレイトン・カーショウ(WHIP 1.25)や、若手リリーフのジャック・ドライヤー(WHIP 1.11)がこの位置です。

WHIP 1.32前後
メジャーリーグにおける平均的な投手のレベルです。
ドジャースでは、ブルペン陣では、ロングリリーフを担当するベン・カスパリアス(WHIP 1.28)や、比較的炎上の少ないリリーフのアンソニー・バンダ(WHIP 1.30)この位置。
また先発陣では、エメット・シーハンがWHIP 1.35、ダスティン・メイ(レッドソックスへ移籍)がWHIP 1.36をそれぞれ記録しています。

WHIP 1.40以上
メジャーリーグにおける平均以下のレベルであり、改善が求められます。
2025年のドジャースでは、本記事執筆時点で先発ローテーションから外れている佐々木郎希(WHIP 1.49)や、ランドン・ナック(WHIP 1.47)がこの位置です。
WHIPと防御率の不思議
直近でセーブ失敗が目立つドジャースのクローザー、タナー・スコットのWHIPは、実は 1.13と優秀な水準。
一方、防御率は4.14と、昨今の不安定さが数字として如実に現れています。
防御率とWHIP。スコットの数値に見られる不均衡の理由は、四球や被安打こそ比較的少ないものの、被本塁打が多いため。すなわち少ない安打で多数の得点を奪われているのです。
逆に、シングルヒットが多いもののホームベースは踏ませずに耐える投手であれば、”防御率は低くWHIPが高い”というスコットとは逆の数値が残ります。
奪三振率(K/9: Strikeouts per 9 Innings)
奪三振率(K/9)は、「9イニングあたり、平均で何個三振を奪うか」を表す指標です。
ゴロやフライによるアウトは、野手のエラーによって進塁/失点の危機を伴います。
また、仮にエラーがなくとも、フライアウトではランナーが進塁する”タッチアップ”による失点の可能性も付きまとうのです。※いわゆる犠牲フライなど。
一方の三振は、投手の力量によって決着がつくアウトであり、味方の守備に左右されません。
つまり、奪三振率の高い投手は、自らの力でピンチを切り抜けることができる「信頼性」の高い投手として評価される、というわけです。
以下に、ざっくりとした奪三振率の読み解き方を数値別でまとめました。
奪三振率 9.00以上
球界を代表する奪三振マシーン。強い球を持ち、打者をねじ伏せられる投手であることがわかります。
奪三振率 9.00(9回9奪三振)とは、すなわち平均して1回につき1三振以上を奪えていること。
ある1試合の投球について評価する場合、「投球回以上の三振を奪えたか」は1つの注目ポイントとなります。
例えば、昨年のサイ・ヤング賞投手であるタリク・スクバルは、奪三振率 10.69という数字を残しました。
スクバルは、2025年も相変わらずの高い奪三振率を誇り、本記事執筆時点の数値は11.56とメジャー全体 1位です。
また、2025年のドジャースの先発陣では、山本由伸が10.21、タイラー・グラスノーが11.50と、チームを牽引する奪三振率を誇ります。
奪三振率 7.00〜8.99
ある程度三振を奪える投手であることを示します。
2025年のドジャースの先発陣においては、エメ・シーハンの奪三振率が8.82、ダスティン・メイが8.36、ランドン・ナックが8.15です。
奪三振率 6.99以下
「打たせて取る」形が主体の投手であることを示します。いわゆる、「技巧派投手」と呼ばれるのは、このタイプです。
年齢とともに身体能力が衰えていくベテラン投手は、遅かれ早かれ技巧派へとシフトします。
例えば、ドジャースのクレイトン・カーショウは、2021年に奪三振率 10.65を記録。一方で、その翌年以降は毎年下がり続けており、2025年の本記事執筆時点では、奪三振率6.05を記録しています。
与四球率(BB/9: Walks per 9 Innings)
与四球率(BB/9)は、「9イニングあたり、平均で何個四球を与えるか」を示す指標です。この数値が低いほど、制球力が優れていると言えます。
四球は相手に無駄な走者を与えてしまうため、コントロールの良さ、つまり「正確性」を見る上で非常に重要です。
以下に、ざっくりとした与四球率の読み解き方を数値別でまとめました。
与四球率 2.00以下
抜群の制球力を誇り、四球で試合を崩すことがほとんどない投手であることを示します。
例えば、高い制球力で知られるサイ・ヤング賞投手のタリク・スクバルは、本記事執筆時点で与四球率 1.13。
これは、現時点の規定投球回到達者の中でトップの数値です。
与四球率 2.01〜3.00
概ね安定した制球力であり、ゲームを作れる投手であることを示します。
例えば、ナショナルリーグで防御率トップをひた走るポール・スキーンズは与四球率 2.20。シーズンを通して、比較的安定した投球内容であることが示されています。
与四球率 3.01以上
四球で走者を出す場面が多く、コントロールに課題がある投手であることを示します。
ドジャース所属の山本由伸は、現時点での与四球率が3.05と、少し崩れ気味。後半戦では、与四球を抑制した安定感あるピッチングが求められます。
QS(クオリティスタート: Quality Start)
QSことクオリティスタートは、「6イニング以上を投げ、かつ自責点3以内」に抑えた場合に記録される指標です。
投手の「最低限の役割を果たしたか」という視点で見ることができ、チームに勝利のチャンスを与えたかを評価します。
なお、QS数を登板数で割った値は「QS率」として記録され、チームを引っ張るエース級投手や、サイ・ヤング賞を目指す投手であれば、高いQS率が求められます。
例えば、本記事で既に数回触れているタリク・スクバルは、31登板で22QS(QS率71.97%)。
同じくサイ・ヤング賞投手のクリス・セールは、29登板で18QS(QS率62.07%)を記録。
ちなみに、シカゴ・カブス所属の今永昇太は、29登板で19QS(QS率65.52%)と、実はクリス・セール以上のQS率を記録しています。
ハイクオリティスタート
さらに質の高い投球を示す指標として、「7イニング以上を投げ、かつ自責点2以内」に抑えた場合、HQS(ハイクオリティスタート)が記録されます。
FIP(Fielding Independent Pitching)
FIPは、「投手が自身の力でコントロールできるとされる要素(※)だけで防御率を計算し直した」指標です。
※「三振、四球、死球、被本塁打」の4要素。
守備や不運な当たりなど、投手の直接的な責任ではない要素を排除しているため、より「真の実力」に近い防御率と表現されることも。
つまり、防御率とFIPの値に乖離がある場合、長期的には防御率の値がFIPの値に近づいていくと言われています。。
FIPは、投手の将来的なパフォーマンスを予測する際に役立つ数字というわけですね。
FIPの読み解き方
FIPは、基本的に防御率と照らし合わせて読み解く指標です。
防御率とFIPの差が少ない投手は、単純な投手の実力と運の要素に乖離がなく、概ね正当な実力が数値に出ていると判断することができます。
一方で、防御率よりもFIPが低い投手は、味方の守備不良を含め、投手の運が悪かった可能性が示唆されます。
本記事でお馴染みのタリク・スクバルは、防御率 2.19のFIP 1.91。ご覧の通りFIPの方が低く、本来であればより良い成績を残していた可能性があるのです。
逆に、防御率よりもFIPが高い投手は、味方の好守やラッキーな当たりに助けられた機会が多く、実際の投球は数字ほど良いものではない可能性が示唆されます。
ナショナルリーグのサイ・ヤング賞候補筆頭であるポール・スキーンズは、防御率 1.91のFIP 2.40と、こちら側。
規定投球回に達している防御率1点台の先発投手は彼のみ(本記事執筆時点)ですが、運に助けられた要素も多かったのかもしれません。
WAR(Wins Above Replacement)
WARは、「その選手が、もし代替可能なレベルの選手(Replacement Player)だった場合と比べて、どれだけチームの勝利に貢献したか」を示す、総合的な指標です。
この指標は、投手だけでなく野手にも適用され、選手個人の価値を測るための最も包括的な指標の1つと言われています。
なお、WARを理解する上で重要な点として、「代替可能なレベルの選手」とは「平均的な選手」という意味ではありません。
むしろ平均以下の、具体的にはマイナーリーグ(特にAAA)レベルの選手で、メジャーリーグのロースターの”穴埋め”としてはすぐに使える選手が想定されています。
つまり、例えばWAR 5.0の選手は、上述のような選手と比べて「5勝分多くチームに貢献した」ということです。
WARとは、すなわち「勝利貢献度」。
MVP投票においても、非常に重視される指標の 1つであるとされています。
以下に、ざっくりとしたWARの読み解き方を数値別でまとめました。
WAR 7.0以上
MVPを満票受賞するレベルの選手。歴史的な貢献度と言っても良い数値です。
例えば、2024年にア・リーグMVPに輝いたアーロン・ジャッジは、WAR 10.8。これは、昨シーズンのMLB全体におけるダントツ1位の成績です。
また、ナ・リーグMVPに輝いた大谷翔平は、DHのみ、すなわち守備による加点がないにもかかわらず、WAR 9.2と驚異的な数値を残しました。
WAR 5.0〜6.9
MVPも射程圏内の選手。サイ・ヤング賞クラスの投手もこの位置です。
シーズンWARが5.0を超える選手は、ほとんどの場合、チームの”顔”とも言えるスター選手。
例えば、2024年のサイ・ヤング賞投手を見てみると、タリク・スクバルがWAR 6.4、クリス・セールがWAR 6.2という数値を記録しました。
WAR 3.0〜4.9
オールスター級の選手。チームの柱のような存在感を放つ数値です。
2024年シーズンのドジャースでは、ムーキー・ベッツ(WAR 4.8)、フレディ・フリーマン(WAR 4.7)、テオスカー・ヘルナンデス(WAR 4.3)と、文句なしの実力者たちがこの位置です。
WAR 2.0〜2.9
レギュラークラスの選手。チームに十分貢献している数値です。
なお、メジャーリーグにおける”平均的な選手”は、WAR 2.0とされています。
WAR 1.9以下
メジャーリーグの控えレベルの選手。スタメンとして定着するには、少し厳しい数値です。
その選手の状況次第では、マイナー降格やトレード、DFAなどの措置が取られるかも。
2つのWAR
実はWARは、rWARとfWARの2種存在しています。
これは、データサイトの算出方法が異なるためであり、rWARは「Baseball-Reference.com」が掲載しているWAR、fWARは「FanGraphs」が掲載しているWARです。
どちらか一方が優れているというものではなく、それぞれのWARには算出方法の点で明確な違いがあります。
例えば、投手におけるWARは、rWARでは実際の投手の失点(非自責点も含む)を含んでいる一方で、fWARは「投手がコントロールできる要素」のみ(=FIP)を元にWARを算出しています。
すなわち、rWARは、「結果」に基づいたWAR。一方のfWARは、よりプロセスや選手の真の能力に基づいたWARと言えるわけです。
なお、本記事においてご紹介した複数選手のWARは、rWARの方を使用しました。
本記事のまとめ
以上、本記事ではMLBの試合観戦を行う上で重要となる「指標」をご紹介しました。
各指標を理解することで、MLBの試合をより深く、そして多角的に楽しむことができるようになります。
この記事をきっかけに、MLB投手への理解がより深まったのではないでしょうか。
防御率やWHIP、奪三振率やQSなど、様々な要素にも注目することで、MLB観戦はより味わい深いものとなりますよ。
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