かのソクラテスは、「知識欲」を人間の大きな欲求の1つとして語りました。
知識欲とは、すなわち”未知を既知としたい”という欲求。そして現代では、過度とも言える情報伝達手段の普及により、知識欲を浴びるように満たすことが可能となりました。
本サイトで扱っている”旅行”も、「行ったことのない場所に行きたい」「見たことのない景色を見たい」「食べたことのない物を食べたい」という点で、未知を既知とする行為です。
3つ目に挙げた「食べる」という行為は、”マズローの三大欲求”の1つとして知られる”食欲”にも思われますが、これは本来、ただ欲を満たすだけであれば何でも良いはず。
つまり、「食べたことのない物を食べたい」という欲求は、「知らない味を知りたい」とも換言でき、むしろ知識欲と通じる部分があるのです。
前置きが長くなりましたが、近年、「最も知識欲をくすぐる旅行」として注目を集めている旅のスタイルがあります。
それが、「エクスペディション・クルーズ」です。
北極・南極を含む人里離れた秘境や、手付かずの自然、悠久の時を感じさせる壮大な景色。
「エクスペディション・クルーズ」は、人間の知的好奇心と冒険心……すなわち「知識欲」を、最大限にくすぐる旅行スタイル。
本記事では、そんな「エスクペディション・クルーズ」について、その魅力や特徴、おすすめのクルーズ会社などを徹底解説します。
エクスペディション・クルーズとは?

ペリート・モレノ氷河|Photo by iStock
まず、「エクスペディション(Expedition)」とは、「探検」を意味する単語です。
「エクスペディション・クルーズ」とは、換言すれば「探検クルーズ」。
単なる観光にとどまらず、未開の地にも等しいデスティネーションを切り拓く、探検的な体験に重点を置いたクルーズスタイルです。
通常のクルーズとの違い
エクスペディション・クルーズは、通常のクルーズ旅行とは一線を画す、大きな魅力を持っています。
ここでは、”通常のクルーズとの違い”に触れつつ、その魅力に迫ります。
小さな船で大冒険
エクスペディション・クルーズで使用される船は、基本的には乗客定員が数100名程度の「小型船」です。
大型客船が毎年のように就航している昨今において、最大でも50,000総トン程度の客船が主流のエクスペディション・クルーズ。
その理由は、大型船では物理的に入港不可能な入り組んだ湾や浅瀬にアクセスし、より自然に近い場所へと立ち寄るため。
タビプロ
また、多くの乗客が一斉に上陸することで環境に負荷をかけないよう、通常よりも乗客定員数が制限される場合もあります。
専門家の同行
エクスペディション・クルーズを行うクルーズ会社は、そのほとんどが独自の「エクスペディション・チーム」を有しています。
エクスペディション・チームとは、すなわち各分野の専門家からなるスペシャリスト集団。
地質学者や海洋生物学者、考古学者など、様々な観点から寄港地の魅力をゲストに紹介します。
本記事冒頭でも述べた通り、エクスペディション・クルーズは、”知識欲”を満たすことに特化した旅のスタイル。
航海中や寄港地観光中のレクチャーで、あなたの知的好奇心は大いに満たされるはず。
参加・体験型の旅
エクスペディション・クルーズは、船上で豪華な時間を過ごしつつ、洗練された空間から絶景を眺められる点が最大の魅力の1つ。
しかし、各寄港地で一度船を離れ、その土地ならではのアクティビティに興じる時間も、大きな魅力と言えます。
例えばカヤックに乗り換えて、氷山の合間を縫うような、エキサイティングな冒険に興じてみたり。
あるいは、ゾディアックボート(ゴムボート)を用いて遠隔地に上陸し、ガイドと散策してみたり。
熱帯域へのエクスペディションで、透き通る海の中、シュノーケリングを行ったり。
五感をフル活用したアクティビティで、真の「エクスペディション」を体感することができます。
特殊な航路と特殊な船


ル・コマンダン・シャルコー|画像提供©︎PONANT
エクスペディションに用いられるクルーズ船は、極地の航行にも耐えられる「耐氷船」か「砕氷船」である場合がほとんどです。
例えば、本記事後半でご紹介するPONANT(ポナン)社の「ル・コマンダン・シャルコー」は、世界初の”ラグジュアリー観光砕氷船”。
行手を阻む氷の海を割り砕き、自ら”航路”を作りつつ、通常の船舶では到達不可能な地にまでゲストを送り届けます。


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エクスペディション・クルーズの主要航路
ここでは、エクスペディション・クルーズで主な行き先をご紹介します。
南極クルーズ
人間の誰しもが一度は憧れる、南極大陸。
アルゼンチンのウシュアイアから出発し、ドレーク海峡を超えて南極半島を目指します。
日本から丸一日以上かけて南米大陸に降り立った後、「吠える40度、狂う50度、叫ぶ60度」とも称されるドレーク海峡を通過する旅程は、まさに冒険そのもの。
試練を乗り越えた先に待つのは、手付かずの雄大な自然と、現地で逞しく生きる動物たち。
大自然から地球の息吹を間近に感じられる、究極の目的地です。


北極クルーズ


ノルウェー|Photo by iStock
海に囲まれ、地球上で最も隔絶された大陸である「南極」とは対照的な場所、「北極」。
ノルウェー領スピッツベルゲン島やグリーンランドを周遊するルートが主であり、シロクマやセイウチといった北極圏特有の動物たちや、雄大なフィヨルドの景観が魅力です。
昼はフィヨルド、夜はオーロラ。大自然からの贈り物を堪能する船旅が待っています。
ガラパゴス諸島クルーズ
エクアドル沖に浮かぶ、独自の生態系を持つ島々を巡るエクスペディション・クルーズも、昨今の流行の1つ。
自然や動物観察はもちろん、シュノーケリングなどのマリンアクティビティも魅力の1つ。
チャールズ・ダーウィンの「進化論」の舞台となったこの地で、通常見かけることのない珍しい生き物たちの生態を覗いてみませんか。
おすすめクルーズ会社
以下では、実際に「エクスペディション・クルーズ」を運航しているクルーズ会社をご紹介します。
特におすすめしたい船会社をまとめているため、クルーズ選びの参考にしてください。
ポナン


ル・コマンダン・シャルコー|画像提供©︎PONANT
「ポナン」は、ラグジュアリー客船を用いたエクスペディション・クルーズの先駆けにして、フランス唯一のクルーズ会社です。
世界初となる極地探検用に建造されたラグジュアリー客船の「ル・ボレアル」を2010年に就航して以来、業界の最前線に立ち続けているポナン。
ヨーロッパ発の企業らしい、環境に最大限に配慮した運航も特徴の1つであり、環境負荷は最小に留めながらも、ゲストへのサービスは最高峰を誇ります。
そんなポナンが何より大切にしている点は、「ゲストの『体験』」。
極地を含む、厳選された寄港地の数々では、豊富な経験に裏打ちされた安心・安全を土台とする、ポナンでしか実現し得ない体験の数々が待ち受けています。
こだわり抜かれた高級フレンチに、フランス流のセンスが光るインテリアデザインなど、語りきれない魅力は以下の各記事にて。
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シルバーシー・クルーズ
「シルバーシー・クルーズ」は、現代のクルーズ業界を牽引する「ロイヤル・カリビアン・グループ」傘下の、ラグジュアリーブランドです。
全室スイートの客室には、ほぼ1人のゲストにつき1人のバトラー(執事)も付属。きめ細やかなサービスの数々で、ゲストの快適な船旅を演出しています。
エクスペディションで使用される客船は、耐氷構造を備えたアイスクラス船。
「ウルトララグジュアリー」を体現するシルバーシー・クルーズの客船では、たとえ地球の果てでも優雅な滞在が叶います。
クォーク・エクスペディションズ
「クォーク・エクスペディションズ」は、世界中のファンを魅了し続ける、極地旅行のリーダー的存在たるクルーズ会社です。
初の「南極一周」や「北極点到達」など、極地観光の歴史に新たな足跡を残し続けているクォーク・エクスペディションズ。
同社の大きな特徴の1つは、日本人エクスペディション・ガイドも乗船している点にあります。
一部ツアーには、外部の日本人通訳も乗船するなど、日本人ウェルカムな雰囲気。
美しく、現代的な内装の船内で、理想の極地旅行が実現します。
HX(フッティルーテン)
フッティルーテン社は、「世界で最も美しい船旅」と謳われる航路(ベルゲン→キルケネス)を繋ぐ、ノルウェー発のクルーズ会社です。
そして、「HX(フッティルーテン・エクスペディションズ)」は、上述のフッティルーテン社のエクスペディション部門が分社化したクルーズ会社。
本国ノルウェーはもちろん、グリーンランドやアイスランド、ガラパゴス、果ては北極・南極などの極地にまで、多くのゲストを誘っています。
HXは、食事やドリンク、Wi-Fi利用はもちろんのこと、魅力的な寄港地での”アドベンチャー”も含めた、オールインクルーシブ制。
また、各客船の「エクスペディション スイート」なら、業界最高水準の船内生活が実現します。
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