豪華なクルーズ船で、大海原を旅する。それは、多くの人が一度は憧れる旅のスタイルです。
しかし、ふと我に返って考えてみると、巨大な鉄の塊がなぜ水に沈むことなく、荒波の中でも優雅に航海できるのか、不思議に思うことはありませんか。
本記事では、そんなクルーズ船の沈まない・倒れない仕組みを解説します。
未知ゆえの不安を吹き飛ばし、次の旅行に「クルーズ」をチョイスしませんか。
【クルーズ】船が沈まない理由
ここでは、「鉄の塊」であるはずの巨大な船が、なぜ水に浮くのかを解説します。
船が浮く理由|アルキメデスの原理
クルーズ船を含む巨大な船が水に浮く理由は、アルキメデスの原理にあります。
これは、紀元前に古代ギリシャの科学者アルキメデスによって発見された、「水や空気などの”流体”の中にある物体には、その物体が押しのけた流体の重さと同じ大きさの上向きの力が働く」という物理法則です。
つまり、ある船が水に浮かんでいるとき、その船の重さと同じ重さの水を押しのけていることになります。
例えば、総重量が10万トンのクルーズ船は、10万トンの水を押し退けているため、沈まずに浮き続けることができるのです。
船が浮く理由|”空洞”の重要さ

簡単なイメージ①
「船が浮く理由」について理解する上で、”空洞の有無”が非常に重要です。
例えば、10万トンの船は海に浮かびますが、空洞のない10万トンの鉄の塊は海に沈みます。
中身の詰まった”鉄の塊”は、「アルキメデスの原理」で言うところの”押しのける水の量”が少なく、生じる浮力が鉄の重さよりも小さいためです。

簡単なイメージ②
しかし、鉄を大きな箱状に加工し、中を空洞にすることができれば、水に触れる面積が大幅に増え、より多くの水を押しのけることができます。
つまり船は、全体にかかる上向きの浮力が船自体の重さを上回っているため、水に浮くことが可能になるのです。

【クルーズ】船が倒れない理由
多くの人々の命を預かる船。当然ながら、ただ海に浮かぶだけでは不十分です。
ここでは、船がバランスを保ち、倒れないようにするための仕組みについて見ていきましょう。
重心と浮心
船の安定性にとって最も重要なのが、重心と浮心という2つの「心」の位置関係です。
重心とは、船全体の重さが一点に集中すると考えられる点のこと。船の重さだけでなく、積荷や乗客、燃料の量によって、その位置は常に変化します。
一方、浮心とは、船に働く浮力の中心点です。水に浮く力は、船が水に沈んでいる部分の形状によって決まります。
船は、この重心が浮心よりも下にあることで、安定を保つことができます。
風や波で船が傾いても、重心が浮心よりも下にあることで、船を元の位置に戻そうとする力が働き、転覆を防ぐのです。
船の安定性を支える工夫
船の安定性をさらに高めるために、クルーズ船ではさまざまな技術が使われています。
フィンスタビライザー
「フィンスタビライザー」は、船の横揺れを抑えるために、船体から魚のひれ(=フィン)のように突き出した装置です。
コンピューターで制御されたこの装置は、波の動きを予測し、フィンの角度を素早く調整。これにより、波の力とは逆方向の揚力を発生させ、船体の安定性を保ちます。
この技術は、特に波が高い海域での航海において、乗客の快適性を大きく向上させるために不可欠なものです。



バラストタンク
「バラストタンク」は、船の重心を調整するために、船の底部に設置された巨大なタンクです。
このタンクに海水を注入したり排出したりすることで、船体の傾きを修正します。
例えば、片側に多くの荷物や乗客が偏って船が傾いた場合、反対側のバラストタンクに水を注入してバランスを調整します。また、風や潮流による傾きにも対応するなど、船を常に水平に保つ役割を担っているのです。
これにより、船はどのような状況でも安定した姿勢を維持し、安全な航海を可能にします。
本記事のまとめ
豪華で快適なクルーズ旅行が実現している背景には、浮力や重心といった物理原則と、それを応用した最先端の技術があります。
日本人開発の「フィンスタビライザー」をはじめとする様々な技術が結集され、ますます快適になるクルーズ船。
次なる旅の選択肢に、そんな「クルーズ」はいかがですか。